Me & My Degu

デグーとの暮らし、日々のあれこれ

かっこいい大人たち 山下和美「ROCKS」

継続は力なり

山下和美「ROCKS」を読む。名作の誉れ高い短編だが、んんー、私には今ひとつぴんとこなかったなー。
現状にも将来にも苛立ちしか感じられない高校生ヨシノブ。真面目に勤めていた会社をリストラされてしまったバーコード頭の父親は、彼にとってはそんな絶望の象徴のような存在だ。父親を見ては大人になりたくないと思うヨシノブ。反して昼は土木作業し夜はバンドでボーカルを担当するアキラは、彼からみても「カッコイイ大人」だ。アキラをヨシノブは追っかけるようになる。山下和美【短編集】 (モーニング KC)なかなか次の仕事が見つからない父親は焦燥感から昔アキラがやっていたバンドを抜けた時のことを思い出すようになる。そうして同窓会でまだそのバンドが活動しているのを知る。ヨシノブには内緒でベースの練習をはじめる父親。ヨシノブが見る中、父親はアキラのバンドにゲリラ的に参加し、客とアキラに認められる。ステージの「カッコイイ」父親を見てヨシノブは初めて大人になりたいと思うのだ   という話なんだけど。
なにが引っかかるかというと、やはり「江戸の敵を長崎で討つ」みたいなね?一発逆転の手段がたまたま音楽だったのねというか。この父親から「音楽が好きでたまらんのよ」という気持ちが感じられないのが致命的。また昔取った杵柄とはいえ、ちょこちょこっと練習しただけで「すっげえうめぇぜ!」と客が驚嘆するベースが弾けるとは思えないのだけれど。バンド音楽をするって事に対してナメてないですか?人様にお金とってお見せするのですよ。実際ミュージシャンに聞くと「以前プレイヤーだったとしても長いブランクがある場合、みっしり半年くらい練習してやっと形になるくらいかな、バンドアンサンブルを意識できるようになるのはそれから」だそうだ。ちょこっと練習してぱっとバンドの中に入って、んでキャーキャー!って、どれだけ「バンドで音楽する」ってことに対してイージーに考えているのやら。というか、このおじさんの自己満足をこういう形で成立させてしまうということは、このバンドのナカミも客も、たいしたこと無いんじゃないの?と思ってしまうのだ。
後やはり年代的なものもあると思う。なにせ「長いこと音楽をやりつづけてきたバンド」のLIVEを見る機会が多いもので、私にとっては「50くらいの人がバンドでROCKする」ことはなにも目新しいことではない。それも昨今の、懐かしいなーようやく余裕ができたからまたバンドごっこがしたいなー的な親父バンドスタンスでない、ずっと真剣に音楽と格闘してきたバンドばかりなわけで、で、そんな人たちといったら、アキラと同じく糊口は別の仕事でしのぐとしても、アキラのようにニヒルにカッコツケていなくて、皆さんからりと明るくなんだかとても仕事に対しても前向きだったりするのだ。(参考HPhttp://www.seppa.jp/archive/datsu/datsu13.php泉州たまねぎファイターズ」)
そんな風に私にはしっくり来なくても、この作品が若い人に支持されているということはエエこっちゃなーと思う。大人になったって滾る熱い思いはあるのだし、そうしたハートを持つ人はたとえ頭がバーコードだとしてもかっこいいのだ!と感じてくれているだろうから。そうして、おっちゃんが奏でる音楽だって若い人の心を熱くすることができると思ってくれているだろうから。
ジャマーバンドが「GOINGKOBE 07」http://starclub.jp/goingkobe07/index.htmに出演する。ガガガSPやスネイルランプなどが出る神戸の無料イベント。5月27日、それぞれのメンバーの子供と同じ年代のお客さん達に向かって、おじさんたちのバンドが真剣にやってきた音楽をぶつけてくれるはず。長いこと音楽を続けてきた人たちだからこそ歌える歌を聞かせてくれるはず。

ROCKな街で ROCKな格好で ROCKな気持ちで ホンマにROCKかい?
全部ちゃうちゃうちゃう! ROCKてなんや!?
  〜「ROCKて なんや?」 ジャマーバンド