Me & My Degu

デグーとの暮らし、日々のあれこれ

unforgettable

食べるのが楽しみ

良かった。長男は大学に行っていた。私のほうが家を出る時間が早かったため、今日も休むのだろうかと心配していた。
彼はゴールデンウィークに近所の遊園地へ出かけていった。生まれてはじめてのアルバイト体験。何人のグループなのか聞き、座席へ割り振っていく。安全バーがきちんと装着されているか確かめ、コースターが戻ってきたら預けた荷物を客が忘れていないかどうかチェックする。「だから僕はわかるんです、あ、あの人だって」
ひどい音、軌道上に停まっているコースター、その時点では長男は死亡事故だとは思っていなかったそうだ。しかし急いで場内のお客さんの安全確保のため向かった現場下で、不意打ちのように痛ましい現実を知る。その現場下のありさまを見てしまい精神的な打撃を受ける人が増えないように、またなにより犠牲になられた女性の尊厳のために、すばやく彼は行動した。いつもはどちらかというと気弱で繊細な長男が、気丈にもその場で一番望まれる対処をしたことに我が子ながらよくやったと思う。
その日帰ってきてからの様子はあまり普段と変わらないような風情だったが、やはり彼なりにかなりのショックを受けていたのだろう。あれほどまでに寝るのが好きだった彼が、ずっと眠れないという。それでも月曜は大学に行ったが、火曜は睡眠不足で身体が辛いと休んでしまった。ストレスによるそういった不調が長引いても仕方ないことだと覚悟した。
「大学の帰りにハンズで買ってきました」と皮ひもを出すので、持っていたウッドビーズをじゃらじゃらカーペットに広げ、あぁでもないこうでもないと通して携帯音楽プレイヤー用のストラップを二人して作る。「お母さんの作ったののほうがイイような気がします〜」と笑う息子。いいよいいよ、君が作ったのも私が作ったのもどっちも君が使えばいいじゃん。ビーズの組み合わせを真剣な顔で考えている息子を見てつくづく思う。親より先に子供が死ぬなんていけないよ。それも遊びに行った遊園地で。親御さんの悲しみを思うと胸が痛くなる。息子と同じような年のお嬢さんにはこれから様々な楽しいことが待っていただろうに。そうしてお母さんにも娘さんとすごす楽しい時間がたくさんあったはずなのに。
息子はこの先ずっと彼女のことを忘れることは無いだろう。ご冥福をお祈りします。