Me & My Degu

デグーとの暮らし、日々のあれこれ

靴の魔術師

西宮の大谷記念美術館でやっている「ヤン・ヤンセン展」に行ってきた。ぽくぽく外歩きするにはいいお日和。美術館のキレイに手入れされたお庭も美しく日に輝いている。極楽鳥花がオレンジ色の花を咲かせている。
ヤン・ヤンセン氏はシューズデザイナー。プラットフォームシューズ(厚底靴と思っていただければ)を最初に作った人物であり、木や竹や鋼や色んな素材をデザインして靴作りに取り込んだひと。ディオールシャルル・ジョルダンの仕事もしていたようだ。
アシンメトリーにはぎ合わせられたペタンコの靴だったり、細く高いヒールのバックバンドサンダルのアッパーの上辺がとさかのように反り繰り返ってフリルのようになっていたり、ソールがZ型で踵部分が空中に浮いてるパンプスであったり、厚底のサボの中がくり抜いてあって向こう側がみえるものであったり。「奇抜なデザイン」と言っていいと思う。でも、それぞれが美しい。「エデンの園」「クレオパトラ」など、一つ一つに形にみあった名前がつけられている。形を見て、それの答え合わせのように名前を読んでいくのも楽しい。ローヒールパンプスのアッパーが虹色の毛糸で足首まで編み上げられているものには「サンキュー、グランマ!」、妖しい青のスエード地で出来たサンダルで前を固定するストラップにつやつやした紅い唇がひっついている(ちょろりと舌まで見える)ものは「カウチで私にキスして」、うねうねした波型のスティールリボンがヒールになっているパイソンのパンプスには「鋼の蛇」、ゴム底のペタンコ靴はもちろん「ビートルズ ラバーソウル」だ。
こういうプロダクトデザインの展覧会は楽しい。何かしらの制約のもと、そこに詰まってる作り手のアイディアが、制約があるがゆえにはっきりと感じ取れる。で、実際に使える、買えるものだったわけで、消費者の立場からあれこれツッコミ入れながら見ることができるのも面白い。で、靴は「手仕事」の部分も多いので、美術工芸品ともいえるわけで。きっと「帽子」の展覧会なんかも同様な面白さだろうなぁ。
で、今回はカプセルに詰まった靴たちを右から左から眺めるだけだったのだが、実際履いたらどうなのかってとこがとっても気になった。この構造的にユニークな靴の歩き心地はどうなのか?ちゃんと踵を招くのか?一種類でもいい、「体験コーナー」みたいなのがあったら最高だったのになぁ。レプリカでも良かったんだけれど。そういえば、ヤン・ヤンセンはオランダの靴業界から「あなたのデザインをコピーした靴をしこたま売りました、どうもありがとう」みたいな賞も貰っているようだった。ずっと以前国立国際美術館であった椅子の展示会も面白かったな。なかに実際に腰掛けられる椅子が数点あって座り心地を試すことができたのだ。
までも、十分満足し帰ったのだった。一緒に行った長男も母も退屈することなく鑑賞し、お庭の緑もゆっくり眺め、駅から近いし、「適度な遠足気分を味わう」という母の希望通りの午後となったのだった。