Me & My Degu

デグーとの暮らし、日々のあれこれ

茨木JACKLIONにて あにきさんソロLIVE

それはさながら「従兄弟会」のような有様なのだった。茨木JACK LION、4月10日。もうすぐその日のLIVEがはじまるという6時半ごろ、ライブハウスに横付けされたミニバンから年配のご婦人、押し出しのいい紳士らがよっこらしょと降り立ち、そしてひときわお年を召された紳士がゆっくり杖をついて車から降り立つのを介助している。細いショルダー紐のぷっくりとしたポシェットをナナメがけしたおば様がたがそこここでご挨拶を交わしておられる。連れてきてもらった小学生はきょろきょろとあたりを見回している。どこにしましょうかね、前に行きましょうか、なんでもね、こういうところはわりと曲によってはすぐに立ったりもするらしいんですよ、まぁ、この辺にしておきましょうかね。和やかにご歓談する年配の一団、最後の出番の女性ミュージシャンのご親戚が40人ほどいらしていたそうだ。
二番目の出番のあにきさんはその様子を見ながらちいさく「どうしょうかね…すごい客層やね…」とつぶやき、「僕ね、ちょっと作戦練ってくるわ。」と楽屋に向かったのだった。後から来た戸口さんは「綾小路きみまろショウを見に来たと言ってもいいようですね」とつぶやいた。
トップバッターは、CDも出しストリートでの経験も豊富と聞く若い男性シンガー。カホーンのサポートあり。よく響く声でオリジナル曲を歌い上げる。声質や曲調からスキマスイッチを思わせるところがある。ギターのアレンジは山崎まさよしの影響もあるような。きっとストリートでは映えるのだろうな。しかしストリートで歌うということは、「聴きたくない人は通り過ぎていく」ということで、考え方によってはとても気が楽なことだ。この日のようなまったく接点の無い人たちの凝視を終始浴び続けるという「修行」は、きつかったか。お行儀良くおくられる拍手。静まり返る客席。
前日にメールをした時にあにきさんは一曲目を迷っておられた。「レゲエビート」っていうオリジナルでガーンとはじめようかなと思っている。Rockなお客さんやったら、ぐっと掴めると思うんや。でも他のミュージシャンがどんなかわからないしなぁ。スタンドマイクのほか、ステージにはキーボードも並べられる。ステージにあにきさんが現れると、とたんに声援が飛ぶ。「待ってました!」イエーイ!マイクに近寄りギターを弾いて、最初の曲は、あぁ!聞いたことある!とお隣のお客さんの顔が輝く。「And I Love Her」。あにきさんいい声。こんばんは、和歌山から来ました。今日は楽しんでってくださいね。そして続けられる懐かしいカバー曲メドレー。力強い歌声、聴きなれたメロディとはっとするフェイク。おじさまおばさまがたに笑顔がうかぶ。
そしてオリジナル曲「ピース」。苦しむ世界のためにすこしの想像力を。平和を願う気持ちを。一言、「PEACE」ひとことでいいです、声に出してみませんか?歌の合間にいざなうあにきさん。そして、ギターに合わせて「PEACE!」しっかりと聞こえた。フロアにいた老若男女の声がひとつになる。そうなのだった、70歳前後の人たちにとって、「戦争」は絵空事ではないのだった。リアルな出来事なのだった。ときおりマイクから離れてナマの歌声を会場一杯に届けるあにきさん。
一声出したことで緊張もずいぶんほぐれてきた。もっと楽しみましょうか。「Don't You just know it (A HA HA)」。声、僕のまねして出してみてくださいね。あにきさんを慕う若いミュージシャン達の楽しげにコール&レスポンスする様子に触発されて、年配チームもだんだんキモチが浮き立ってきているようだった。張りのあるあにきさんの歌声。やけっぱち気味。あはははは!
こちらは群青でのバージョンとくらぁ!
今日はね、お金払って来てよかったなって思えますよ。次の二人、とっても素晴らしいです。関西人のハシクレだから、どうしてもコストパフォーマンスを考えてしまうんよね。そしてキーボードにうつって弾き語り。あにきさんといえば「ギタリスト」のイメージだったのだが、なんのなんの、達者にピアノを弾かれるのだった。「プレスリーの歌った曲をやってみましょうかね。ご存知の方も多いでしょう」と始まったのはやさしいやさしいLovesong「Let It Be Me」。
つぎの曲はオリジナルで「サム・クックのように」

サム・クックの声はいつまでも僕の胸に刺さったまま
誰がなんと言おうと ギターを取って弦を張れ
それが君だ 君らしさだ 
彼はそう言ってくれた
サム・クックのようには歌えやしないけど
でも僕はここで君に歌ってる 
    (サム・クックのように:あにき)

どうもありがとう、と言ってすたすたとステージから去るあにきさん。拍手は鳴り止まない。でもイベントだし、アンコールはないよね、お客さんはみな次の彼女を見たいわけだし。と思っていたら、なんと鳴り止まない拍手はまとまって、それも彼女のご親戚達のほうから力強く響いてくるのだった。アンコール!せめてもう一曲!「親戚の出番を待っている人達」はあにきさんの歌声で「LIVEのお客さん」に変わっていたのだった。
ほんとうにありがとう。最後、もう一回みんなで楽しみましょう。破れかぶれで楽しい「Twist and Shout」がはじまった。Ah〜Ah〜Ah〜♪ほら、自分が歌いやすいところで参加してくださいね!シェキナベイベー!(ツイストエンシャウ!)笑顔笑顔笑顔!みんな笑顔で大声出して歌っているのだった。8歳も19歳も28歳も47歳も65歳も72歳も、そしてたぶん83歳も、Ah〜!Ah〜!Ah〜!ブラボー、あにきさん!オリジナル中心のいつものLIVEをあきらめて、お客さんを第一に考えることに徹したLIVE、でも、本当に楽しかった。オリジナルを聴く機会、これから幾らでもありますよね。
最後の出番はその親戚縁者が見に来ていたKimiyoさん(現在は「みしまりよ」として活動中http://sound.jp/riyomishima/)。キーボードを使っての弾き語り。この日は高名なギタリスト岸部眞明さんとのセッションで、そのためもあってたくさん親戚が観に来ていたのだろう。岸部さんはギターのみに専心することにしたそうで、お喋りなし。彼女は一人で場を盛り上げようと躍起になっているように感じられた。元気のいいMCとはうらはらに彼女の歌声はなかなかしっとりしていてヘンなクセもなく、そして小さい歌声のときでも力が芯に感じられて、いつもは女性ボーカルには点が辛くなってしまうのだが、なかなかいいなぁ、と思ったのだった。
最後のセッションは今夜の出演者全部での「STAND BY ME」。あにきさんが中心となってまとめていく。「One more time!」たっぷりギタリストのギターも堪能して大団円。どうもありがとう!さよなら!暗くなる舞台。あれ?あにきさん、どうしたの?
暗いステージの真ん中、マイクの前で一人残ったあにきさんがスタッフに手を振る。数秒遅れてぱっと照明がつく。「ね、みなさん、アンコール三組合同でオシマイってことはないよね。もう一回、彼女の歌を聴きたいと思いませんか?」大きな、大きな拍手。ほら!早くおいで!彼女を手招きする。戸惑いながらもKimiyoさんはお気に入りの歌をしっとりと歌ったのだった。彼女に、そして彼女がステージで歌う姿を見るために夜はるばるはじめてライブハウスという場所にやってきた皆さんに、そしてこの場に居合わせたすべての人に、あにきさんはちょっと強引なやり方ですばらしい時間をプレゼントしたのだった。


LIVEハウスはいいところ 一度みんなで遊びに来てよ
いかしたビートの海の中 二時間泳げば最高さ!
    (ライブハウス:ジャマーバンド)

その日のあにきさんのひとりごと
http://blog.livedoor.jp/ykawabata451/archives/18614604.html