Me & My Degu

デグーとの暮らし、日々のあれこれ

手拍子考

奈落から見上げる

山崎まさよし氏が今弾き語りでツアーを行っている。今OKST2003ツアーでは、「座ってじっくりその場でならされる音を楽しんでほしい」という意向が伺える。しかしそこに立ちはだかるのは、客の「もっとはじけたい」という欲求と、バラード以外は手拍子を入れるという行為だ。
彼の弾き語りに手拍子を入れるのはもったいないという思いがする。卓越した彼のリズム感の上から、凡庸な一般人のリズム感を上書きするようなイメージ。もちろん、なかには手拍子を入れてみんなで盛り上がるというナンバーもあったら楽しいとは思うのだが。
バンドであったなら普通は許されないだろう、ギターのリズムのダイナミックな揺れ、からまるボーカルもそれにあわせて微妙にシンコペーションが入ったりして、で、その二つが合わさった時、ものすごくスリリングな「聴く体験」ができる。でもそれは、お客さんがぺったんぺったん単調に叩く手拍子ですぐに埋もれてしまう。
以前のステージでは、複雑なリズムのために手拍子がずれて、前の拍で叩く人後ろの拍で叩く人、それぞれの間で微妙にズレて叩く人と、もうぐしゃぐしゃになってしまった時もあった。
彼の弾き語りは客の手拍子に助けられて歌が元気付く、みたいなレベルではないと思う。複数の人間が音楽を作り出す時には不可能な、一人で歌もギターも同時にやっているからこそ生み出せる複雑なうねりを味わうためには、手拍子を控えるというのが最上の近道だと思う。